実家が砂壁ニスト


去年の始めに「今年は詩を読めるようになりたい」「いろんな人のエッセイを読みたい」と書きました。どうでしょうか。一つも読みませんでした。そんなもんだよね〜〜〜

でも昨年は痴情がもつれてばかりの小説を少し離れて(最後の最後に桜木紫乃『ブルース』というセックス爆弾を読んでしまいましたが)、遠藤周作を読んだりした。「昭和に男性によって書かれた江戸時代のキリスト教の話『沈黙』なんて難解の代名詞かよと思われたけど意外にスラスラ読めた。『深い河』も。ただそこから何を教訓とすればいいかまで解釈できる頭はありませんでした。宇多田ヒカル先生はDeep Riverを書き上げたというのにね。

あと高校生のときぶりに『八日目の蝉』を読み返し、高校生のとき内容の3分の1も理解してねえじゃんと思った。まじで前半の逃走劇のハラハラ感がいいよね〜みたいな印象だった。馬鹿じゃん。後半。後半を手で書き写せお前は。また結婚したら絶対読もう。お父さん、あなたみたいな人だよ…

そして一番今まで読んで来なかったジャンルの本が丸山ゴンザレス『ダークツーリスト』。クレイジージャーニーでおなじみの彼が、世界中のスラム街や麻薬戦争の最中のメキシコなどを取材した記録ですが、とにかく日本でこのまま暮らしていても知り得ないことを見てる感にハマるのだ。私はきっとふしぎ発見とかも大好きなはずなんだ。でもほとんど見てないし世界史も知らない。旅行に行きたいと漠然と思っていてもお金を貯めて行こうと思わない。給料が安い寒いだの言っても結局今の環境が幸せで仕方ないのだ。それを少し自覚し始めたために、とりあえず本を読むだけでも、知っておこうと思い始めている。でもこれも結局は下世話な知的好奇心の言い訳かもしれない。

このシリーズのような感じで昨日『ルポ川崎』という本を読んだ。T-pablow率いるBAD HOP、そして酒井健太の地元でおなじみのヤバい街川崎。その川崎がどんなところか、どんな人たちがどんな暮らしをしているかが取材されている。ここでの川崎は川崎市の中の川崎区。取材を受けているのはBAD HOPのメンバーやダンサー、スケーターなど地獄の川崎からHIP HOPカルチャーを通して成功してる人達。貧乏は当たり前、仲間内全員一斉逮捕、みたいな不良少年時代を振り返り、「成功していい大人に出会えて良かった、川崎は本当は才能のある奴がいっぱいいる、これからはこんなことをしたい」と希望を語る。「ラップがなかったらそのまま本職になってた」と語るような彼らが「夢」なんて言葉を口にするようにまでなる。
私は不良ものの暴力的、でも仲間愛が感動する!みたいな作品が割と嫌いなので、この本を読んでても、希望、よかったね、がんばれ!の部分より彼らが話の途中でサラッと言う「中学生の覚せい剤中毒が普通にいっぱいいる」「友達の母ちゃんはヤク中で売春婦だった」みたいなのが気になってしょうがない。あまりに普通に出てきては全く掘り下げられず、が繰り返されるので気分が悪くなってきます。ダークツーリストは知っておくべきでも結局は遠く離れた一生行かない国のこと。それとは違って日本の話と思うと重みが違う。酒井健太のせいでバカなヤンキーがいっぱいいる治安が悪い街くらいに思ってたけど全然そんなもんじゃない。何が川崎のおせちは概念だ。平子が読め。砂壁にするぞ。

長くなりましたが、ラップする不良少年のことを、てっきりワルぶりたくてラップしているんだと思っていました。ラップをおしゃれに明るい音楽に進化させていった人達のラップばかり聴いてきたので、音楽として立派に発展したHIP HOPをいつまでもワルの道具にしてんじゃねえと。でもこんな街では彼らがラップを始めるのはごく自然なこと。HIP HOPの生まれたアメリカの街のように、スラムで、犯罪が横行して。彼らは2pacのリリックに共感すると言うのだから。その勘違いを解消できただけ良かった。うわー嫌いなラップだと思ってたBAD HOPも聴いてみようかなと思ったけど、それもかわいそうな育ちから這い上がって成功した彼らへの同情に他ならないのではないかと思い結局聴いてない。何よりトラップが嫌いなので。なんだあれ、なんで流行ってるんだ。かっこいいと思う奴らで大いに盛り上げてくれ。その流れだけ応援するよ。奴らがおしゃれジャズのループとかで始めたら聴いてみたい。